アレルギー

アレルギーとは

ヒトは、体内に「異物」が入ってくると「敵」とみなし、排除しようとします。
この際、通常免疫機能が働きますが、特定の物質に対し強い免疫反応が起こる場合をアレルギーと言います。
アレルギーを起こす物質を「抗原」と言います。
この「抗原」に対し「IgE抗体」という免疫物質が作られます。
再び抗原が体内に入ると、IgE抗体は瞬時に大量に産生され、この結合体が、アレルギーを起こす細胞にさらに結合・反応すると細胞内から化学伝達物質が放出され、アレルギー症状が出現します。

卵アレルギーでの反応を例に見てみましょう。
卵を摂取 →卵白IgE抗体を大量産生 →卵白抗原と卵白IgE抗体が結合 →アレルギー細胞が反応 →化学伝達物質の放出 →アレルギー症状(発赤、紅斑、腫脹、かゆみなど)となります。
卵白アレルギーを持っていなければIgE抗体は産生されず、反応は起こりません。
アレルギーの有無は、このIgE抗体を持っているかどうかを血液や皮膚反応で検査します。

小児領域では、年齢を経るごとにアレルギー疾患が順番に現れることが多く、アレルギーマーチと言われています。アトピー性皮膚炎 →食物アレルギー 小児喘息 →アレルギー性鼻炎 →花粉症 です。アレルギー反応の起こっている場所が変化・移動しているものと推測されています。

アトピー性皮膚炎

生後6カ月未満、あせも、乳児湿疹と診断され、治療されています。
通常の治療で治るはずのこれらの症状が、改善しなくなり、次第に悪化していきます。3カ月以上続けば慢性状態と考え、アトピー性皮膚炎が濃厚に疑われます。

アトピー性皮膚炎は、皮膚直下にアレルギー細胞が存在し、化学伝達物質を放出し続けているため、治癒には時間を要します。 見た目で皮膚表面が良くなったとしても、皮膚深層ではアレルギー反応が持続しているため、治療を中断すると悪化してしまいます。

有効な治療法は「ステロイド塗布(炎症やアレルギー反応をおさえる)」です。

しかし、塗布量が少なかったり、回数が少なければ効果は出ません。 病状に応じた強さのステロイド塗布と適切なスキンケア、この二本立ての治療が長期的に必要となります。

治りが悪いと医師を変えたり、症状が良くなったからと指示された治療を止めてしまうと、結局遠回りの経過になる事が多いです。 治療がうまくいかない時ほど、医師に繰り返し相談して一貫した治療を行うことが大切です。

昨今の話題は、ステロイドとは異なるアレルギー治療です。
・プロトピック療法:免疫抑制剤を塗布します。顔や首によく効きます。
 当院で数人に使用し効果は良好です。
・レクチム療法:特異的なアレルギー薬の塗布で、最近使用できるようになりました。
2才以上でのみ使用が可能です。共に使用量を厳守することで副作用はほとんどないようです。
ステロイド療法で困っている方に勧めます。

食物アレルギー

ある特定の食物を食べた後に反応が出た場合に疑います。

今まで食べたことがない、または数回少量しか食べていない。
通常、食後2時間以内に、反応が強ければ10分程度で症状が出ます。
アレルギー症状は、数時間で軽快・消失します。
症状は、発赤、紅斑、じんましんが多いです。
最初からショックなどの症状が出ることはまれです。

乳児の原因食物は、卵、牛乳、小麦の頻度が多いです。
幼児期以降は、甲殻類、果物、魚類、ピーナッツ、ソバなどで起こります。

以下の場合、食物アレルギーの可能性は少ないです。

ヨーグルトを食べて症状が出たが、粉ミルクを哺乳している。
いつもと同じものを食べていたが、症状が出た。
毎日、症状が出ている。

食物アレルギーの診断手順

1.詳細な問診(食べた時刻、症状発現の時刻など)が重要です。
2.症状の診察、または写真で病状を確認し、病型を判断します。
3.アレルギーの可能性が高い場合、検査をします。

食物経口負荷試験

原因と疑われる食物を意図的に食べさせ症状の発現の有無を判断します。
一番正確な方法ですが、多少リスクがあり、専門施設で実施します。

血液検査

一般的な方法で、IgE抗体の有無とその程度が分かります。
IgE抗体が陽性でも、時に食べられることもあります(感作されているが、アレルギー発現がない)

皮膚テスト

皮膚にアレルギーエキスを侵入させ、反応をみます。
こどもでは安静が保てるかが、問題になります。

食物アレルギーの治療方針

「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去」が原則です。

必要最小限の除去とは、

食べると症状が誘発される食物だけを除去する。
「心配だから」と言って、必要以上に除去する食物を増やさない。
原因食物でも、症状が誘発されない「食べられる範囲」までは食べる。

即ち、「ごく少量、安全な範囲で食べる」と言うことです。
大半の食材は、1~数年間の除去を継続することで改善し、通常通り食べられるようになります。
食物アレルギー発症を懸念して、離乳食の開始を遅らせても効果はありません。

自己判断で食事制限をする事は、こどもの成長に不利益を被ることになります。
強いアレルギーが持続し、特殊な経口免疫療法(毎日ごく少量ずつ食べる)を行う場合もあります。

小児喘息

正式名称は気管支喘息です。通常3才までに発症し、3~5年程度喘息症状を繰り返し、小学生時代に軽快していくので、「小児喘息」と言われています。

気道にアレルギー性病変が起こっているため、少しの刺激に反応し、気管支の粘膜にアレルギー反応が起こります。病状が悪化すると、気道が収縮して狭くなるため「ヒューヒュー、ゼーゼー」と呼吸がつらくなります。

「気管支が弱い」「咳が出やすい」「アレルギーの咳」「ホクナリンテープの使用」などと説明されている児は要注意です。

病状

小児喘息の前兆は、咳が出やすい、かぜをひくと咳が長引く、強い咳症状が2週間以上続く、強い咳が出ることが多い、咳で嘔吐する、痰がからみゼロゼロとなる、朝だけ咳が出る、寝入りだけ咳が出る、夜中に咳が出ることが多い、息づかいがゼーゼー・ゴロゴロする、、、、、などです。
「気管支が弱い」「咳が出やすい」「アレルギーの咳」「ホクナリンテープを処方」などと説明されている児は要注意です。

喘息では、気管支にアレルギー性病変が起こっています。気道に刺激が加わると、気管支の粘膜にアレルギー反応が起こります。
気道が過敏になり、咳や痰が出やすい状態になります。痰が多いとゼロゼロとなり、咳が多くなります。気道が収縮して狭くなると「ヒューヒュー、ゼーゼー」と聞こえ呼吸がつらくなります。

かぜをひいた時、低気圧の雨の時、気温が急に下がった時、朝晩と日中の気温差が大きい時、また春先、梅雨時、秋に悪化することが多いです。
何度も喘息症状が出て、数年間繰り返します。
程度によって喘息の前兆、軽症、典型例、重症などと判断します。
喘息の正確な診断は、肺機能検査など特殊な方法で、こどもでは一般的ではありません。従って症状を丁寧に聞き取ることが大切で、繰り返し小児科医を受診してください。
一時期症状が出なくなっても治癒したわけではありません。気道の炎症が残っている場合、何かのきっかけで症状が出てきます。3年程度、喘息症状が出なかった場合、治癒と考えられています。

治療

以前は、有効な治療法がなかったため喘息の病状は重症化し、気道狭窄による喘鳴(肩呼吸、ゼーゼー)を多くのこどもが経験していました。
近年、治療の中心は気道のアレルギー反応を抑える事です。抗アレルギー内服薬(プランルカスト、モンテルカスト)を利用することで、こどもたちの喘息症状は非常に軽症化しています。
しかし、一部の児は治療に難渋することから、ステロイドを使用しています。この治療法は劇的な効果を示しますが、副作用の懸念から、かつて小児領域では回避されていました。
現在、ステロイド内服薬は短期間の使用が勧奨され、呼吸困難をしのぐことができます。
ステロイド吸入薬の登場によって、副作用の懸念が少なくなり、長期使用も可能です。さらに低年齢でも使用でき、喘息症状をコントロールできるようになりました。
かつて多くの喘息児が経験した夜間の救急外来受診、吸入処置、点滴処置、改善ない場合の入院治療、いずれも激減しています。

ただ、いずれの治療法を行っても、喘息の改善・治癒には数年かかることから、主治医と相談しながら治療法を選択することが大切です。
小学生時代には喘息症状を繰り返させず、治癒に持っていきたいと考えています。

花粉症

3月初めに発症し、約一ヶ月間、目と鼻の症状が続くと “スギ花粉症” が疑われます。
4月にも症状が長引く場合、ヒノキの影響があるかもしれません。

その他、春~秋はカモガヤ、イネ科、ヨモギ、ブタクサ、アキノキリンソウなどで花粉症が起こります。
一年中鼻症状(くしゃみ、鼻水、鼻閉)を繰り返せば、ダニやハウスダストのアレルギー性鼻炎と考えられます。

花粉症の症状について

こどもではアレルギーは軽度です。しかしこどもでも目や瞼、鼻の症状はかなり強く出ます。

その理由は、

アレルギー反応は軽度(花粉の暴露年数が未だ少ない)
屋外活動が多い(登下校、外遊び、クラブ活動など)
外出への対策が不十分(外出控え、マスクや眼鏡利用、洗顔)
悪循環に陥る(目のかゆみに対し過度にこすって悪化する)
薬物療法に積極的でない(点眼や内服をいやがる)

診断は、主に症状の有無から可能です。

花粉の飛散時期に一致して、目と鼻の症状が出る。
その症状が、約一ヶ月間持続する。
毎年、同じ時期に繰り返している。
血液検査は、必ずしも必要ありません。

治療について

点眼、内服、点鼻薬は、症状を抑えるには有効です。
しかし花粉を多量に浴びると、治療中でも症状は抑えきれません。

スギ花粉症のつらい症状の方には、アレルギーを軽減させる、治癒させる方法として「舌下免疫療法」という特殊な方法があります。これは最低3年間毎日継続するもので家族の理解と協力が必要です。

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じんましん

皮膚表面に赤い紅斑で大きさは大小不同、一部膨隆した白い部分があり、かゆみを伴った場合、じんましんと診断されます。
数時間で消失することが多いため、スマホなどで写真の記録を撮ってください。
2週間以上持続すると慢性として扱いますが、正式には6週間以上です。

小児のじんましんでは、半分以上は原因不明です。
原因が食物アレルギーなら、2才までに多く、食材を初めて食べた後に出たかどうかがポイントです。
「かぜ」の罹患時、最近体調がすぐれていないなどでも数日間繰り返し出ます。
春先に経験することが多く、何らかの原因が作用しているのでしょう。

治療は、かゆみに対し、飲み薬、塗り薬を使用します。