小児の診療
小児科クリニック
こどもの訴えに対し初期対応を行います。主な訴えは、発熱、咳、鼻水、嘔吐、下痢、発疹、けいれんなどです。
かつて、これらの症状の中に、日本脳炎、麻疹、百日咳、破傷風などが隠れていました。予防接種の効果でめったに出会うことはなくなりました。
時に小児喘息、川崎病、てんかん、虫垂炎、白血病、小児がんなどの初期の症状です。
日々多くのこどもの症状を診ていますが、小児科医特有の目・診察の勘で、見逃しをできるだけ少なくすることを心がけています。
こどもの“かぜ”
赤ちゃんは生後6ヶ月までに母親からもらった免疫が消失し、感染症に対する初期免疫がなくなるため、感染症にかかりやすくなります。
“かぜ”を引き起こす病原微生物は、約200種類以上あります。そのほとんどがウイルスであるため、有効な治療法はなく自然治癒を待つのみです。抗生物質が効くのは、「細菌感染症」と「マイコプラズマ肺炎」です。
保育園などで集団生活を始めると、季節による流行があるため、最初の一年間は何度もかぜを引きます。しかし、2年目以降は、かぜの頻度が極端に減ります。これはかぜを引くたびに免疫ができた効果です。
発熱は、感染症に対する生体の重要な反応であり、基本方針は経過観察です。高熱によって食欲低下が続いたり、夜間の睡眠に影響が出る場合には、解熱剤の使用を考慮します。
かぜの症状に対して必ず薬が必要なわけではありません。小児科医は、病状の経過をよく聞き、こどもを診て重症度を判断し、対処法などを伝えます。症状が改善しない場合や悪化している場合は再診してください。重症化していないか、回復力が働いているかを判断します。養育者が不安を感じる場合、何度もこどもを診ることが重要です。
こどもは自分の病状を言葉で表現できないため、養育者からの情報や小児科医の聞き取りが大切です。
小児医療
小児医療はかつて内科医療の一部でしたが、医療の進歩に伴いこども特有の疾患があることから、分離しました。
・生まれつきの疾患/遺伝性疾患、未熟児
・こども特有の感染症
・アレルギー疾患(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、小児喘息など)
・発達・成長の諸問題
・その他、心臓病、てんかんや神経疾患、悪性疾患
上記のような小児疾患は成人とは病態生理が全く違うことから、診断や治療、将来を見据えた治療方針の選択など、特有の対応が必要です。現在の小児科医は上記の専門性を持っています。さらにオールマイティーに診療することができますので、プライマリーケア(身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療)を担っています。
我々小児科医は高い専門性とプライドを持って、こどもを中心とした診療を行なっています。(医師不足ではこの限りではありません)
こどもの心
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母乳育児
母乳は赤ちゃんの初めて食事です。
母親の乳首が吸われると、母体内にオキシトシンやプロラクチンという幸せホルモン、母性ホルモンが分泌されます。これが子育てに欠かせないものになるのです。出産後数日間、母乳の分泌量は少ないことが多いですが、そのまま継続してください。私たちは哺乳動物ですので、赤ちゃんが吸い続けることで必ず母乳は出てきます。医学的必要性がない場合、安易に糖水や人工ミルクを与えないことが、母乳育児を成功させる秘訣です。
新生児・乳児期の諸問題
赤ちゃんの洗顔
ニキビのようにブツブツした赤い発疹が顔に出ることがあります。新生児期は思春期と同じように体の代謝が旺盛なため、皮脂の分泌が多いです。これは赤ちゃんの皮膚を守るために必要ですが、現代のように栄養状態・生活環境が良いと、毛穴がふさがれニキビのようになってしまいます。赤みが強い場合には薬を使用しますが、基本的に石けんでの洗顔が大切です。
赤ちゃんの嘔吐
哺乳後に口からミルクが出てくることが多くあります。勢いよく出た場合は嘔吐です。あふれるように、または、わずかにチョット出てきた場合は「いつ乳」と言います。新生児期、食道と胃のつなぎ目がゆるいため、胃内のミルクが容易に口まで逆流してくるために起こる現象です。気にしすぎずに、体重増加を確認することが大切です。
肥満症
日本の経済発展に伴い、住環境や食生活が良くなり、乳幼児や児童の体格は年々改善しています。さらに拍車をかけているものに、少子化に伴う過保護的育児、電子機器の長時間利用、それに伴う外遊びの減少などより、一部のこどもたちは肥満になってきています。福島県では、原発事故以降、目を見張るほど肥満児が増え、教育現場では対応せざるを得なくなっています。
肥満の定義は、性別、年齢、身長、体重を加味して判断します。
【男・10才・身長150cm 】であれば、日本人の標準体重は統計処理から「42.3kg」です。
本人の体重が64.5kgなら、(64.5-42.3)÷42.3×100=52.5%
学童では、>20%を軽度、>30%を中等度、>50%を高度肥満と診断します。
低身長
性別、年齢により日本人の標準身長が統計的に決まっています。
そのうち小さい方から約3%(同学年の100人の内1〜3番目に小さい児)が低身長と考えられます。
原因としては、先天的な問題(遺伝、子宮内発育)、環境異常(栄養摂取、疾患)、ホルモン異常などがあげられます。
数年間の身長の伸び方を確認し、精密検査が必要か判断します。一部のこどもは、成長ホルモンの治療を行うことで身長の伸びの改善が期待できます。
こどもの便秘
「現 状」
以前より便の出にくい児はいましたが、親も医師も出ていれば良いという認識でした。昨今の研究で便秘が悪化すると、腸管が拡張し便意の感覚が鈍くなります。また便塊が石のように固くなることで排便困難になり肛門が裂けて出血したり、便液が漏れ出たり(遺糞症)する事が分かってきました。
このような場合、排便時に強い痛みを伴うことから、排便はつらいことと感じているようです。従って便意があっても排便を我慢するようになり、便の大腸内停滞時間が長くなります。水分がさらに吸収され、濃縮された便・固い便・細切れの便・丸い便になっています。
乳児期から始まっている児もいます。また女児に多いようです。消化吸収能力が強いと想定され、実際は良いことですが、悪循環に陥って便秘になっています。
「メカニズム」
食物は、胃液・胆汁・腸液などで消化・分解されます。小腸で栄養を、大腸で水分を吸収された後、残りが便となり直腸までたどり着きます。直腸内の内圧が高まると、排便反射(便意)が起こり、腹圧がかかり、肛門括約筋がゆるみ排便にいたります。
ヒトは食べた食物を夜間睡眠中に時間をかけて消化・吸収し、最終的に便を作成します。覚醒していないため便意を感じません。朝食後、あるいは起床後一定の時間が経過後、直腸内圧の上昇を感じ、排便に至るのが「良い排便のメカニズム、リズム」と考えられています。
しかし便意があっても排便をがまんしていると、排便反射が消失します。すると水分の再吸収が起こり、便はさらに濃縮され小さくなり、直腸の内圧は低下します。これを繰り返していると排便反射が鈍くなり、便意がなくなり、便秘が悪化してしまいます。
「治療法」
- 排便は楽しいこと
2~5才児では、排便行為をつらいことと感じています。そこで排便時には周囲の大人が「良かったね、いっぱい出たね」とほめて励ましてあげることが大切です。 - リズムをつくる
5才以上なら、朝食後10分程度トイレで力ませ排便を試みさせてください。この時間帯は一番便意が出やすいです。また、昔の和式トイレでの座り方が排便には一番良い姿勢と考えられています。 - 水分と食事
水分摂取が少ない児では便は濃縮になりがちです。しかし水分を多く飲んだからと便が柔らかくなるわけではありません。食物繊維は、吸収が悪く水分を保持するため便の水分量を多くします。食事量が少なくならないように甘いものは程ほどにしてください。 - 内服薬
整腸剤は昔から利用されてきました。軽症では効果を期待できますが、頑固な便秘ではどうでしょうか? 近年小児でも安全に利用できる治療薬が認可され、効果を示しています。便秘の対応を理解できるのは小学生ぐらいです。それまで大人が関与して排便コントロールを行う事が大切と思います。排便状況を改善させ、快適な排便を行ってほしいものです。